個人と業務委託契約を交わす場合、それが適法な業務委託(請負)に当たるか、それとも労働者性が肯定され、労働関係法規が適用されるかどうかは、契約書の内容ではなく、実態によって判断されると何度も説明してきましたが、適法に業務委託が成立するかどうかの判断は難しく、また微妙なものも少なくありません。
業務委託に当たるかどうか考慮すべき事項としては、以下のような事情が挙げられています。
- 仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
- 業務遂行上の指揮監督の有無
- 拘束性の有無(勤務時間・場所の拘束性など)
- 労務提供の代替性の有無
- 報酬の労務対償性(時間給など報酬の算定方法)
- 事業者性の有無(機械・器具・経費の負担関係など)
- 専属性の程度
など、その他の事情も含めて総合的に考慮して、適法な業務委託か、それとも労働者性が肯定され、偽装請負になるのか判断されます。
それでは、判例は業務委託や偽装請負に関して、どのような立場を取っているか具体的に見てみましょう。
車両持ち込み運転手の労働者性について
一審判決では、会社から運転手に対する指示や時間的場所的拘束は、請負契約の性質から生ずる拘束の範疇を超えると判断し、労働者性を肯定しました。
つまり、運転手には労働関係法規が適用され、残業代等を運転手に支払わなければなりません。
しかし、控訴審・最高裁は、これを否定し、運転手に対する業務委託は適法としました。
最高裁は、運転手について、「業務用機材であるトラックを所有し、自己の危険と計算の下に運送業務に従事していたものである上、会社は運送という業務の性質上当然に必要とされる運送物品、運送先、納入時刻の指示していた以外には、運転手の業務遂行に関し、特段の指揮監督を行っていたとは言えず、時間的、場所的な拘束の程度も一般の従業員と比較してはるかに穏やかであり、運転手が会社の指揮監督の下で労務を提供していたと評価するには足りない」と判断し、運転手の労働者性を否定しております。
本件のように、業務用機材を受託者個人が持ち込むような形態の場合には、業務委託契約として認められる可能性が高いと言えます。
NHK集金員、ガス料金集金員について
委託者であるNHKとの間で受信料金集金業務等委託契約を締結していた受託者である集金員について、東京地裁は労働者性を肯定しました。
内容としては、NHKにより目標値が設定され、その達成度の報告が求められていたこと、その達成のために詳細な指示・指導がなされていたことなどから、集金員は労働者に該当するとしています。
しかし、東京高裁は、訪問日時、従事場所、巡回方法などを集金員が自ら計画立案していたこと、兼業が許されていたこと、報酬は受託業務の対価として見るべきであって、一定時間の労務提供の対価である賃金とは異質であることなどから、労働者性を否定し、適法な業務委託としました。
なお、ガス料金の集金人や電力会社の検針員などについては、事実上、出退社の時刻が定められている実態にあったとか、業務方法について個別具体的な指示がなされていたことなどを理由に労働者性を肯定しております。
映画カメラマンについて
東京地裁は一審判決で、映画カメラマンについて「映画撮影という業務の性質上、、必然的に一定の日程に拘束されるが、そうだとしても労働者とは言えない」という判決を下したのに対して、東京高裁は、「日程的な拘束は映画監督の指揮命令下にあったことの証拠である」として労働者性を肯定しております。
検討結果
以上、見てきたように業務委託契約が適法に成立するかどうかの判断は非常に難しいと言えます。上記はほんの一例ですので、必ずしも上記判例に近いからといって、業務委託が適法に成立するとは限りません。あくまでも実態を個別に検討した上で、適法な業務委託かどうか判断されます。
明らかに労働者性が肯定されるような実態でありながら、業務委託に捻じ曲げようとする行為は話になりませんが、業務委託かどうかの判断が難しいものに関しては、事前に専門家に相談されることをおすすめします。




